高二の春、僕は音響の席 賑やかな演劇部の隅で 人見知りな自分を隠してた 君はあの時の、親友の後輩だったね 最初（はじめ）に好きになったあの子は 一週間で僕から離れていった 「友達がいい」と告げられた夜に 君はただ、静かに話を聞いてくれた 部活でも、委員会でも、いつも隣 他愛ない笑い声が心地よかった 心の傷、いつしか癒されて 気づけば僕の眼は、君だけを追っていたんだ Ah- 君が彼氏の話をするたびに 僕の胸はギュッと締め付けられる それでも目をそらせなかったのは 君のそばにいる、それ以上の幸せを知っていたから 卒業式当日、勇気が出せないまま 人混みの中、君を探していた 「卒業おめでとう」その一言が 僕の意気地なしの愛を、永遠（とわ）に封じ込めた 季節が巡り、僕は社会人になった 偶然立ち寄った店、君のバイト先 「久しぶり」から始まった二人の時間（とき）は まるで高校の頃に逆戻りみたいで 駅に迎えに行ったり、深夜のドライブ 帰り道、送っていく助手席の君 それは恋人じゃないのに 誰よりも深い、偽りの親密さ どうしても眠くて横になった僕に 君はそっと膝枕をしてくれた 温かい温もりと、優しい手で 撫でる仕草に、涙が出そうになった Ah- 君の服から香る柔軟剤の ふんわりとした記憶に包まれて 「やっぱり君が好きだ」と確信した夜に 君は無邪気にうさぎのぬいぐるみをくれたね 抱き枕にして、温もりを探すけれど それは僕の孤独を満たす代わりでしかない いつかこの腕で抱きしめたいと願うほど 手の届かない存在だと、思い知るんだ 四人で出かけたあの日のDisney 賑わいの中で、君と二人きりになった 「今日楽しい？」って聞いた僕に 笑顔で頷いた横顔、今でも鮮明（はっきり）覚えてる 彼氏の相談、耳に入らないほど 愛おしくて、目を離せなかった もし、本当にこの子が彼女なら... 一瞬だけ、現実を忘れたあの場所が 僕の一番、切ない思い出になった Ah- ルームミラーに映る寝顔を見てた 君は僕の気持ちなんて知らないまま こんなに近くにいるのに、遠い人 僕はただ、ハンドルを握りしめていた あの膝枕の温もりも、柔軟剤の香りも 僕の心臓（こころ）を繋ぎ止める鎖だ 意気地なしだと、自分を責めるけれど 君が好きだと叫べなかった、僕の全てなんだ それから、君に会えてない... うさぎのぬいぐるみを抱きしめて 今も、あの日の優しい夢を見ている 届かない物語を、一人で繰り返す